殺陣用語
今さらだが、殺陣関連で用いられる単語をまとめてみようと思い立った。随時更新する・・・と思う。
あ行
■アクション監督(あくしょんかんとく)
殺陣師・技斗スタッフの上に位置する役職で、格闘シーンでのカメラワークやカット割りも含めたアクションの設計、撮影とそのシーンの編集まで手掛ける専門職。
■足運び(あしはこび)
足捌き。足の動かし方。
■足払い(あしばらい)
相手の足を狙う斬り方。
■歩み足(あゆみあし)
普段の歩き方と同様に足を出す、足運び。
■居所(いどころ)
相手の居る場所。
殺陣では安全の為、刀が当たらないように相手の居ない所に刀を通す事があるため。相手の居る所に向かって斬る場合などに用いる。
■入り身(いりみ)
相手の攻撃に対して、相手に向かって半身(はんみ)で相手の懐、間合いに入る事。
■受け(うけ)
相手の攻撃を防ぐ事。
上段・中断・下段など様々な受け方がある。
■受け流し(うけながし)
「流し」と略す事が多い。
攻撃してきた相手を自身の後方に受け流す捌き方。
■受け身(うけみ)
相手に投げられた、また自分で倒れた時、安全に身体を制御できる方法。
■得物(えもの)
武器として使う道具の事。
■おこづく
つまずいてよろけたような仕草。
■送り足(おくりあし)
前足を一歩踏み出した移動に伴って後ろ足が付いてきて、前足のかかとに後ろ足の土踏まずが付く足運び。
■追っ払い(おっぱらい)
相手と間合いをとるために刀を振る事。
■落とし(おとし)
斬りかかってきた・突いてきた刀を上から下へ叩く捌き方。
■落とし差し(おとしざし)
帯刀の仕方。
地面に対して刀を垂直ぎみに帯刀する事。
か行
■霞(かすみ)
霞の構え。
正眼の構えから、切っ先を左に開き、手元を引いた構え。
■刀をたたむ(かたなをたたむ)
相手との距離が近い場合に、相手に刀が当たらない様に、切っ先を自分の方へ寄せながら振る、斬り方。
■担ぎ(かつぎ)
肩担ぎの構え。
刀を肩に担ぐように構える。
■絡み(からみ)
絡み手(からみて)・掛かり(かかり)とも言う。
殺陣・技斗における脇役の事。斬られ役という事もある。
■閂差し(かんぬきざし)
帯刀の仕方。
地面と刀を水平ぎみに帯刀する事。
■跪坐(きざ)
つま先を立て、膝を折った上に腰をおろした姿勢。
■切っ先(きっさき)
刀の先のとがった所。
最もよく切れる部分(先端から10センチほど)を切っ先三寸(きっさきさんずん)、ものうちどころ、と言う。
■切っ先を走らせる(きっさきをはしらせる)
手首の返しを使って、素早く刀を振る事。
■技斗(ぎと)
擬斗・擬闘(ぎとう)とも書く。
現代劇における戦い。主に無手での格闘を指す事が多い。
■技斗スタッフ(ぎとすたっふ)
技斗に関して、俳優への指導や人選をしたり、手付けを行う役職。
■斬り上げ(きりあげ)
逆袈裟斬り(ぎゃくけさぎり)という人もいるので注意。
相手に向かって左下から右上へ斬りあげる斬り方。
腰から首元へ向かって斬る。
左右反対にした斬り方を左斬り上げ(ひだりきりあげ)ということが多い。
■袈裟斬り(けさぎり)
袈裟と略す事が多い。右袈裟(みぎけさ)とも言う。
相手に向かって右上から左下へ斬りおろす斬り方。
首元から腰へ向かって斬る。
左右反対にした斬り方を逆袈裟斬り(ぎゃくけさぎり)・左袈裟(ひだりけさ)とも言う。
■下段(げだん)
下段の構え。
刀の剣先を足元へ下げた構え。
相手を誘う為に使われる事が多い。
■下馬(げば)
歌舞伎から来た言葉。
見得をきる際に使われる事が多い。
転んだ相手を踏んで見得を切る際の踏まれる側の人。
足を正座のようにたたんで丸まった姿勢が多い。
■牽制(けんせい)
刀や目線、体位などで、相手を抑止する動きや所作。
■現代殺陣(げんだいたて)
技斗(ぎと)と同義だが、武器を持って戦う現代劇に使われる事が多い。
アクション殺陣という人もいる。
■鯉口を切る(こいくちをきる)
刀を鞘からわずかに抜き緩める事。
鞘に収まった刀をすぐ抜刀できるようにしておくことなどを意味する表現。
■声かけ(こえかけ)
絡みが芯に斬りかかる時に、合図として出す声。
「えい」「やー」など。
■五行の構え(ごぎょうのかまえ)
上段・正眼(中段)・下段・八相・脇構え、の五つ基本の構え。
さ行
■逆手持ち(さかてもち)
刀の持ち方。
本来の持ち方を順手(じゅんて)といい、刀身が小指側になるように持つ。
■捌き(さばき)
相手の攻撃をさばく事・こなす事
受け・落とし・跳ね上げなどの総称。
■鞘送り(さやおくり)
抜刀前に左手で鞘を前に押し出す事。
■鞘引き(さやびき)
抜刀する際、刀を前に出しながら、左手で鞘を後ろへ引く事。
■残心(ざんしん)
残身・残芯と書く事もある。
斬ったあと気を抜かず意識をし続ける事からくる、次の動きに繋げる所作やその表現。
■膝行(しっこう)
ひざまずき膝頭をついて進退すること。
退がることを膝退(しったい)とも言う。
■シャッター
立ち回りの中で、絡み同士が立ち位置を入れ替わる事。
■十字受け(じゅうじうけ)
横面(よこめん)にきた刀に対して、刀を垂直に立てる受け方。
刀どうしで「十」の字になる。
■所作(しょさ)
立ち居振る舞いの事。
立ち方・歩き方・刀の持ち方などなど。
■上段(じょうだん)
上段の構え。刀を頭上に振り上げた構え方。
上段より上へ振り上げる事を大上段(だいじょうだん)と言う。
■芯(しん)
心と書く場合もある。
殺陣・技斗における主役の事。
■真剣白刃取り(しんけんしらはどり)
斬りかかってきた刀を両手で挟み受ける技。
■擦り上げ(すりあげ)
攻撃に対し、刀を下から上に振り、峰(みね)もしくは鎬(しのぎ)を相手の刀に擦らせて、相手の刀を跳ね上げる捌き方。
■すり足(すりあし)
殺陣における基本の歩き方。
腰を入れて、腰の高さを変えず、足の裏を相手に見せないように歩く。
■擦り流し(すりながし)
自身の刀の切っ先を下方にして、打ってきた刀をいなす捌き方。
避け(よけ)の際に、自身の体に沿わせて身を守る。
「ジャリン」や「シャリン」など擬音で言う事もある。
■寸止め(すんどめ)
止めと言う事もある。刀を捌かれる際に、安全面と捌かれる前提の為に、刀を相手に向かって振るが、当たらない所で止める事。
■正眼(せいがん)
正眼の構え。
基本の構え、中段の構えと言うこともある。
相手の喉元に刀の先を向けた構え方。
■背落ち(せおち)
トンボを切るなどと言う。
宙返りして背中から地面に倒れる事。
■鶺鴒差し(せきれいざし)
帯刀の仕方。
鞘の先が鶺鴒の尻尾の角度になるように帯刀する事。
た行
■帯刀(たいとう)
腰に刀をつけること。
または、その身につけている刀。
■立ち回り(立ち回り)
時代劇・現代劇問わず、戦いを指すため、殺陣も技斗も立ち回りとなる。
■殺陣(たて)
時代劇における戦い。当ブログにおいての殺陣の定義はこちら
■殺陣返し(たてがえし)
舞台の本番前に、殺陣の振りを確認する事。
■殺陣師(たてし)
殺陣に関して、俳優への指導や人選をしたり、手付けを行う役職。
■殺陣田村(たてたむら)
1936年、沢田正二郎の七回忌記念公演の演目だが、一手一手の刀のラインや足運びなどの所作を綺麗に見せる表現として使われることもある。殺陣を「たて」と読み始めたのもこの演目から。
■千鳥(ちどり)
芯(しん)に向かって複数人の絡み(からみ)が連続して斬り掛かる事。
絡みは左右から同じ手(て)で斬りかかる。稽古で行う事が多い。
■血振り(ちぶり)
斬り終わった後、納刀の前に、刀から血を振り落とす所作。
■突き(つき)
刺突(しとつ)とも言う。
相手を武器で突く事。
■継ぎ足(つぎあし)
後ろ足を前足のかかとまで進め、前足を一歩前に踏み出す足運び。
■付け回し(つけまわし)
絡み(からみ)が芯(しん)を中心に斬りかかろうとしながら芯に付いて動く事。
■鍔競り合い(つばぜりあい)
「鍔ぜり」と略すことが多い。
打ち合わせた刀を鍔もとで受け止めたまま互いに押し合う事。
■手(て)
立ち回りにおける一つの行動(行為)の事。
斬る・受ける・避けるなど。
■手数(てかず)
立ち回りにおける手を足した数。
「避けて斬る」なら2手。
■手付け(てつけ)
手付(てつけ)・殺陣付け(たてつけ)・振付(ふりつけ)とも言う。
殺陣を組み立てる作業の事。殺陣師が行う。
■手を捨てる(てをすてる)
攻撃する際に、素早く省略して振る・フェイクとして用いられる事が多い。
例えば、袈裟・逆袈裟と斬る手がある時、袈裟を素早く省略して振るなど。
■天神差し(てんじんざし)
帯刀の仕方。
刃の側を下に向けて帯刀する事
■天地(てんち)
歌舞伎から来た言葉。
天は上、地は下、上と下で刀を合わせる事。
■胴斬り(どうぎり)
相手に向かって右から左に水平に斬る斬り方。
左右反対にした斬り方を逆胴斬り(ぎゃくどうぎり)・左胴斬り(ひだりどうぎり)とも言う。
■飛ばし(とばし)
弾き(はじき)・払い(はらい)等とも言う。
斬りかかって来た相手の刀に対して自身の刀を振り当て、相手に後ろにさがってもらう(跳ね上げ)・自身の後方に移動してもらう(受け流し)以外の方向に移動してもらう時に使う。
な行
■長物(ながもの)
棒・槍・薙刀などの長い得物の総称。
■殴り(なぐり)
棒や槍・薙刀の石突など、刃の無い長物で相手を打つ事。
■ナンバ
ナンバ歩きとも言う。
右手と右足、左手と左足をそれぞれ同時に出して前に進む歩き方。
■二刀(にとう)
二刀流(にとうりゅう)とも言う。
両手に刀を持つ事。
■抜き胴(ぬきどう)
相手の懐に入り込み胴を斬る斬り方。
■盗む(ぬすむ)
実際居るべき立ち位置ではないが、カメラ位置や芝居の兼ね合いで、立ち位置をずらす事。
■納刀(のうとう)
刀を鞘に入れる所作。
は行
■刃筋を立てる(はすじをたてる)
相手を斬る為に、刀の刃を斬る角度に合わせる事。
立っていない状態を「刃筋が寝ている」と言う。
■斜に構える(はすにかまえる)
刀を斜めに構える。
体を斜めに構える場合もある。
■八相(はっそう)
八相の構え。
刀をまっすぐ耳の横した構え方。
刀を逆に左耳横に構えると逆八相(ぎゃくはっそう)
■抜刀(ばっとう)
刀を鞘から抜く所作。
■跳ね上げ(はねあげ)
攻撃に対して、下から上に跳ねあげる捌き方。
跳ね上げられた時は、真後ろにさがるのが基本。
■半身(はんみ)
腰・肩が相手に対して一直線になるように横に構える姿勢。
■平正眼(ひらせいがん)
平正眼の構え。
正眼の構えから、切っ先を右へ寝かした構え。
■開き足(ひらきあし)
右へ移動するなら右足、左に移動するなら左足から足を踏み出して、体を開く足運び。
■平突き(ひらづき)
胸を突く時などに、肋骨を避けるように、刀を水平にして突く事。
■踏み込み足(ふみこみあし)
剣道の面打ちでよく見受けられる足運び。
後ろ足で蹴って、前足が飛びこむように前進する足運び。
ま行
■間合い(まあい)
相手を斬れる距離(自分の間合い)。
自分と相手との距離という意味でも使う。間合いを取る、間合いを詰める等と使う。
■巻き落とし(まきおとし)
攻撃してきた刀を受けてから、自身の刀を回して、相手の刀を上から叩く捌き方。
もう一つは、刀を回しながら、相手の刀を上から叩く捌き方。
道場や団体によって、教え方が異なる。
■真向(まっこう)
真向唐竹割り・真向斬りなどと言う。
正面に真っ直ぐ上から下へ斬りおろす斬り方。
■見得を切る(みえをきる)
歌舞伎から来た言葉。
自分の力を誇示するように見せる決めポーズ。
■峰打ち(みねうち)
刀の峰で相手を打ち叩く事。
■峰返し(みねがえし)
相手を刀の峰で打てるように、刀の刃を手前に返す事。
■身の内(みのうち)
間合いの内側。
■無構え(むがまえ)
構えず立ったまま、絡みに正対する構え。
強さをアピールする表現などに使われる。
■無駄足を踏む(むだあしをふむ)
芯が動く中での必要な歩数を超える事。
不要な足運びをしている事。
■無手(むて)
得物(武器)を持っていない素手で戦うこと。
■無刀取り(むとうどり)
素手で相手の刀を奪い取る技。
■股立を取る(ももだちをとる)
袴の裾を引き上げて、動きやすくしたり、裾が汚れるのを防ぐ所作。
や行
■柳(やなぎ)
擦り流し(すりながし)を指す場合が多い。
柳受け(やなぎうけ)。切っ先を柄より下方に構えた受け方。
■山型(やまがた)
山を描くように斬りかかる。袈裟、逆袈裟と斬りかかる方法。
この時、斬りかかられた側は、避けが基本。
■横一文字(よこいちもんじ)
斬り方、構え方、帯刀の仕方など、横一線のものを指して言う。
横一文字斬り、水平斬り(すいへいぎり)、横一文字の構え、など。
■横面(よこめん)
刀を水平に肩越しから腰あたりに横から斬りかかる。
この時は捌かれる事が多い為、「寸止め」の事が多い。
■避け(よけ)
相手の攻撃をよける事。
ら行
■離合(りごう)
相手との立ち位置をすれ違って入れ替わる事。
わ行
■脇構え(わきがまえ)
刀を右脇に取り、刀の先を後ろに下げ、刀身の長さを相手に知られないようにした構え方。
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