「捌き方」を考える

捌き方は、受け流し、落とし、跳ね上げなどなど色々とあるが、結論からいうと、文字通りの表現になっているかが、重要だという事を語っていこう。

例えば「落とし」。絡みの「突き」を芯が「落とし」たりするのをよく見る。「文字通り」の動作は「上から下への動き」なのだから。捌き方・刀の軌道は上から下だ。誰でも理解できる簡単な理屈だ。
ここからが今回の重要なポイント。それは「文字通りの表現」だ。
手が「落とし」だから、芯が絡みの刀を上から下へ「落とし」ました、では終わらない。絡みの刀の切っ先が下方へ行かないと「落とし」には見えないという事だ。捌く側と捌かれる側の両者で「どう捌いたか」を見せるのだ。
極端な事をいえば「落とし」なのに絡みの刀が上方向に行くと「落とし」には見えない。

言いたい事は以上だ。
当たり前の事すぎて、なぜこんな事を語るのか。

殺陣において「捌く」事は、道路の交差点のようなものだと考える。芯を中心に絡みが右往左往するのだ。芯の刀の切っ先が「矢印」だと想像してみてほしい。

「受け流し」で考えてみよう。
前から絡みが斬りかかって来たのを受け流すならば、絡みは捌かれた後、芯の後方へ移動する事となる。芯の刀の切っ先も後ろを指していないと理屈に合わないのが理解できるだろうか。
どんな捌き方においても、芯の刀の切っ先は、「止め」の位置から、次に絡みもしくは絡みの刀に進んで欲しい方向に切っ先が伸びる。単に後方へ絡みが流れるのではなく、芯が絡みを後方へ流す刀の振り方だから、絡みもそれに合わせて後方へ流れるのだ。

では「跳ね上げ」ならどうだろう。
絡みが正面から真向で斬りかかり、芯が跳ね上げたとした場合、芯の刀の切っ先は、絡みの方向を指す。絡みは来た方向へ真っ直ぐ跳ね返されるように移動する。

捌いた後に芯の刀の切っ先(矢印)が向く方向と、絡みもしくは絡みの刀が進むべき方向は同じでなくては「どう捌いたのか」が表現として不明瞭となる。
「落とし」ならば下
「受け流し」ならば、絡みが進んでいる方向の先
「跳ね上げ」ならば上&絡みが来た方向
「巻落とし」ならば下
「擦り流し」ならば斜め下
「擦り上げ」ならば上
というように、芯の刀の切っ先が向く方向にリアクションを取る事で、分かりやすい表現としての捌き方ができる。

基本的な捌き方として、上記を理解・実践できれば、絡みが芯の動きを見ずに捌かれる事も無意味な動きをする事も少なくなる。「捌き方」とは芯と絡みの共同作業という事だ。
もちろん、この基本の上に応用があるのは言うまでもないが、この基本が出来るようになる頃には、応用についても自身の正解を出すことができると考えている。