「受け方」を考える

動画を見ていて「受け」が少ない、というか無い、と実感したので、今回は「受け」だ。

基本的には、上段受け、中段受け、下段受け。他によく出てくるのは、両手の上段受け、柳受けだろうか。

ただ色んな動画を見ていても「受け」と認識できるものが少ない。殆どが「打ち合い」だ。両手の上段受けのみ「受け」と認識できる程度。柳受けに至っては、「擦り流し」かどうかの判別がつかないものがほとんどだ。「擦り流し」を「柳」というところもあるため、こう言う曖昧さが出てくる。

まずは「打ち合い」ではなく「受け」でなくては表現出来ない事、それは攻守の区別だ。

どちらが攻めていて、どちらが守っているか。これは戦いの優劣を見せる為にも必要な技術だ。これが「打ち合い」では、力は均衡していて優劣は区別できない。この「打ち合い」と「受け」はどちらなのかハッキリ意識して見せるべきだ。

特に、殺陣2.5を好む方々は「打ち合い」を好み、「受け」はほぼ見当たらない。

「打ち合い」を乱用するメリットは何も無いのだ。

本来、刀は打ち合えば、刃も欠ければ、折れたりもする。刀を合わせる事自体が好まれるものではないのだ。折れれば直ぐに買い替えられるほど安価でもない。

しかし、刀を合わせない殺陣が華やかさに欠ける一面も想像にたやすい。

この絶妙な捌き方として、「受け」はとても重宝する。相手の刀の勢いを殺す。打ち合うよりも刀への負担を軽減させる。しかも刀が当たっている為に華やかさにも支障がない。現実的にも表現的にも、程よく中間が取れる技術だ。

力が均衡している様に表現したければ、交互に受け合えば事足りるのだ。「打ち合い」はアクセント的に使った方が際立つ。

では「受け」はどうすればよいか。

足運びは、一歩さがるのが基本だ。真向・袈裟には、上段受け。胴切りには中段受け、足払いには下段受け。

受ける側の切られる「点」に刀を出して、一歩さがると綺麗に受けができる。

刀の軌道は「点」への最短距離で動かす。これは相手の刀が動き始めてから、それに反応して受けをするためだ。相手より先に受ける準備をしては、元も子もない。

では「柳」はどうか。

柄より切っ先が下がっている状態で一歩さがって、刀が合わされば、問題なく「柳受け」だ。これ以外の動きは、少しグレーだが「擦り流し」だ。というのも「擦り流し」は本来、相手と離合するように動き、安全確保の為に刀を体に沿わせているに過ぎない、いわば「避け」だ。だから刀を合わさずとも良い。しかし「受け」は刀を合わさなければ成立しない。

ここで出てくるのが、打ってきた刀に対して、垂直の方向に移動しながら柳で捌く手だ。多くの場合が「擦り流し」に見受けられる。「擦り流し」は次の一歩がすぐ出る。次の攻めの手が出せるよう（攻守交代の可能性を見出すため）に避けているのだから当然だ。しかし、「柳受け」は受けているのだから、一瞬の間があり、相手の刀の軌道が逸れた事を確認してから次の一歩が出る。
「受け」を見せるか、見せないかで表現が変わる。

早い立ち回りで「打ち合い」ばかりだと、どうしても刀を振り回してるだけに見える事が多い。「受け」も多用し殺陣の表現を拡げて頂きたい。